横浜のオフィス

 

「 空間を緩やかに規定するポーラスな壁 」

神奈川県横浜市に拠点を置く工務店のためのオフィスの改修プロジェクトです。

要望として打合せスペースと執務スペースを分割せずに同居させる事、日々増えていく図面や書類、カタログやサンプルのための収納スペースを確保する事が求められました。また、この工務店は大正12年創業の大工集団であり、施工もクライアントである工務店が自ら行う事からオフィス空間全体が工務店の技術や特質をPRする広告となる事も求められました。

そこで私たちは既存の細長い長方形の空間を三分割して奥に社長スペース及びストックスペース、中心に執務スペース、全面道路に面した陽当たりの良い大きな開口のある南側に打合せスペースを設け、それらを堅固な壁で分割(分断)するのではなく、個々のスペースは成立しつつも全体として一体感があり、将来的な要望の変化にも柔軟に対応できる可変的な空間を考えました。

まず、既存のRC造の梁や壁を地形のように捉え、それらに沿い支持しながらデッドスペースの無いようにロシアンエコバーチt=21mmによる板で全体をゆるやかに規定し、場所によってそれらが収納棚になったり、デスクカウンターやキッチン、作品を飾る展示棚、受け付けの窓口など様々な使い方に対応しながらも一体的に繋がるように考えました。

集積されていく図面や書類はそれ自体が会社の財産であり経験や知見の蓄積であることから、ただスペースを圧迫する「もの」ではなく、並べ方や密度で空間の質を変化させ、多様な陰影を空間に与えてくれる環境装置のように考えました。 引き渡し当日は密度も疎らな空間が、歳月を重ねるごとに会社の姿を活き活きと反映し、会社と発展と共に成長してくれる事を期待しています。

 

 

※物が入る前の写真はこちら

 

主要用途   :オフィス
建設地    :神奈川県横浜市
設計期間   :2019年6月~2019年8月
工事期間   :2019 年8月~ 2019 年10 月
延床面積   :RC造地上6階建ての2階部分 58.81㎡
設計・監理  :株式会社 濱田慎太建築事務所
施主・施工  :矢島建設工業株式会社
写真     :鈴木研一