つくばみらい市の住宅

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「暮らしを耕す家」

 敷地は関東近郊の長閑な田園風景が広がる小高い丘の上に位置し、西側には背の高い針葉樹をたたえる神社、敷地内には施主が数十年前に植樹した木々や草花、遊具やかまどのある東屋から薪小屋など長い時間をかけて耕されたそれぞれに思い入れのあるものたちに囲まれた場所で計画が始まった。
 施主は数年前まで敷地北側で長年助産院を営み、過去には東南アジアをはじめとする海外での生活が長いことも手伝って季節を問わず一日の大半を外部で過ごす事が多く(食事は大概外の東屋)、引退した後も外部空間を生活の主空間として日々の暮らしを楽しんでいた。
 施主との度重なる現地での対話を通して、我々もその土地に植わる木々に込めた思いや四季を通して行われるイベント(小屋作りから果実の収穫や薪割り等)を経験する中で、既存の木々や小屋・畑等と関係しながら施主のこれからも続いていくであろう敷地の開拓や逞しくも遊びに満ちた日常を支え、様々な活動のきっかけづくりの拠点となるような家のあり方を目指した。
 まずは既存の樹木をできるだけ残すように配慮しながら、海外生活を共に過ごした数々の調度品や、建具がもつスケール感を頼りに必要諸室を満たすコンパクトなボリュームの中に夫婦それぞれの個室を水廻りとセットで東西に配し、個室間に設けたWICを個室間の緩衝帯とした。それら個室群の北側には洗面・浴室、南側にはリビング・ダイニングとキッチンを設ける事で生活動線をできるだけコンパクトにまとめながらも回遊性があり、全体としても一体感のあるプランとなるように配慮した。
 各個室の上部には一部2階を設けて孫や子供たちの遊び場としてだけでなく、施主自身が裁縫や趣味に興じたり冬にはサンルームとしても機能する家の中に居ながらも多用途に使えるテラスのようなフリースペースを設えた。
 これらの諸室を覆うように2枚の勾配屋根をかけ、それらを囲うように建物外周部に奥行2mの内部から地続きのテラスを備えたのびやかな下屋を纏わせた。北東のテラスは庭仕事の休憩場になったり急な来客対応の場として、南側のテラスは時間や季節によって様々な表情をみせる周囲の緑豊かな景色を味わう場として、西側は敷地内で採れた野菜や果物を調理する外キッチンや大きなエノキの木陰の下で外仕事の準備をする場として、一日の中で最も多くの時間を過ごすであろうこれら半外部のテラス空間が施主の多種多様な活動を支え、今後も全方位に広がる活動のきっかけとなるように設えた。
 豊かな自然を讃える森の中、敷地いっぱいに広がる建主の暮らしが、この家を拠点として田畑を耕すように益々生き生きとしたものとなり、この土地がさらに活気に溢れていくことを期待している。

設計・監理:濱田慎太建築事務所
施工  :有限会社 岡村建業

構造  :須藤正尊一級建築士事務所
写真  :鈴木研一写真事務所
敷地  :茨城県、つくばみらい市
種別  :専用住宅
敷地面積:477.34㎡
建築面積:150.81 ㎡
延床面積:130.22㎡
構造形式:木造/地上2階
設計期間:2022/5〜2023/6
工事期間:2023/8〜2024/8

  • 第39回茨城建築文化賞 住宅部門最優秀賞 受賞 
  • 新建築 住宅特集 2022/02 掲載