徳生公園のトイレ

 

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風景と調和し、風と光が抜ける小さなトイレ

 この建築は、横浜市都筑区の「徳生公園」という、豊かな自然に囲まれた公園の中に位置する公衆トイレです。公園は窪地のような地形で、中央には大きな池が広がっています。池の周囲には森と散策路が巡らされ、地域の方々の憩いの場となっているだけでなく、多くの野鳥や生物が生息する都市の中とは思えないほど豊かな環境です。私たちは、この周囲のランドスケープに溶け込み、時間とともに風景の一部となっていけるような建築を目指しました。
 建物は、機能ごとに分節された小さなコンクリートのボリューム群を、軽やかな鉄骨が支える大きな一枚の木屋根が覆う構成としています。屋根とボリュームの隙間からは、心地よい自然の風と光を内部に取り込みます。建物全体が周囲の木々と調和しながら風景と一体となるような静かな存在感を目指しました。
 また、人工物の少ない公園環境において建物の圧迫感を抑えるため、ボリュームを女子便所、男子便所、多機能便所、手洗いと機能ごとに細分化し抜けをつくることで散策路が伸びていくようなつくりです。さらに壁面をテーパー形状にすることで輪郭を曖昧にし風景への溶け込みを促しました。このテーパー状の壁面は、地中梁の外側に向かって伸びる構造とすることで意匠的な効果だけでなく、限られた内部空間の隅々まで効率的に設備の配管を通すことを可能にする、機能的な合理性も兼ね備えたデザインとなっています。外装には、公園の中にある石のような質感をもつコンクリート小叩き仕上を採用し、周囲の地形や景観と呼応する柔らかな表情をつくり出しました。
 内部空間はシンプルな矩形と素材で構成し、清潔感と安心感のある空間としました。手洗いのみの利用にも対応しやすいよう、男女の手洗いを独立させて配置しつつ、出入口が正面から直接見えないレイアウトにすることで、プライバシーにも十分に配慮しました。一方で、防犯対策として設けた目隠し壁や欄間パネルはFRPグレーチングやアルミパンチングメタルなど透過性のある素材を用いることで視線の抜けを確保し、換気性能と安心感、開放感を両立させています。
 素材の選定においては、木梁に集成材ではなく一般的な流通材である「2×12」材を採用し、鉄骨部材には仮設足場などにも用いられる「単管パイプ」を使用しました。これにより、経済性と施工性に配慮しながらも、シンプルで力強いデザインを実現しています。
 照明計画はすべて間接照明とし、夜間は柔らかな光が足元や手元を照らします。周囲に対して明るくなり過ぎることなく、夜の公園に落ち着きと安心感を与えるデザインを意図しました。

設計期間:2023年7月~2024年2月
工事期間:2024年6月~2025年9月
延床面積:42.62㎡
敷地面積:40,120.23㎡
構造 :地上1階 RC造
用途 :公園施設(便所)
発注者 :都筑土木事務所
設計監理:濱田慎太建築事務所+横浜市建築局
構造設計:須藤正尊建築設計事務所
設備設計:総合設備計画
施工者 :
建築工事:菅野建設株式会社
電気設備:アイキン電機工業
空調衛生設備:日生設備
写真:鈴木研一写真事務所

  • 徳生公園便所改築工事に伴う設計プロポーザル 最優秀賞